漆塗り伝統技法の継承と革新に取り組む職人 中国安徽省

ソース:新華社作者: 2024-08-08 15:01

安徽省黄山市屯渓区の黎陽老街にある工房で漆の色を調整する甘而可さん。(6月6日撮影、黄山=新華社配信/施亜磊)

 中国工芸美術の大家で、国家級無形文化遺産「徽州漆器髹飾(きゅうしょく)技芸」の代表的伝承者、甘而可(かん・じか)さん(69)は、安徽省黄山市の黎陽老街にある伝統的な「徽派建築」の住宅に工房を構えている。

 工房では甘さんが漆塗りの箱に模様付けを行っていた。箱の素地が手の中で巧みに回転し、表面に粘度の高い漆が高低や密度の異なる点状に重ねられていく。徽州漆器髹飾技芸は千年以上の歴史がある。徽州の伝統漆器「犀皮(さいひ)漆」は、筋目がサイの腹の模様に似ていることから名が付けられ、明代の書画家、董其昌(とう・きしょう)は「漆器の王様」と称した。

 犀皮漆の製作は「指先」の技量がものをいう。平面部分はガラスのように平らで滑らかで、ふたと本体の合わせ目はスムーズに開閉でき、力を加えなくてもふたが6、7秒かけて自然にゆっくりと閉まらなければならない。ルーペで拡大すると、爪ほどの小さな範囲に、描いてあるわけでも、刻んであるわけでもない筋目が40本ほど見える。

 古代の犀皮漆作品は、漆に混ぜる顔料が一般的に銀朱、雄黄、赭石(しゃせき)などの鉱物色に限られていたため、色合いが地味だった。甘さんは漆に金箔などの貴金属を加え、金属の屈折率を利用することで、漆の表面に自然の律動、ほとばしるように流れる筋目を表現している。

 甘さんは、徽派伝統漆芸の昔からの原則を忠実に守り、塗りの技法や材料の処理技法十数種を独自に開発した。徽州漆器髹飾技芸は2008年、第2次国家級無形文化遺産リストに登録された。11年には甘さんが創作した「紅金斑犀皮漆大圓盒」が北京の故宮博物院に永久保存された。その後十数年の間に、作品は中国国家博物館や大英博物館、米メトロポリタン美術館などに収蔵されている。

 技術の革新だけでなく、甘さんは犀皮漆器の形状も多様化させ、ここ数年の作品の中には碗や缶などの現代の生活に取り入れやすいものも多い。国際的なブランドとコラボして、現代風デザインを取り入れたカーボンファイバー製犀皮漆家具も創作した。

安徽省黄山市屯渓区の黎陽老街にある甘而可漆芸工房に展示された漆器。(6月6日撮影、黄山=新華社配信/施亜磊)

安徽省黄山市屯渓区の黎陽老街にある甘而可漆芸工房に展示された漆器。(6月6日撮影、黄山=新華社配信/施亜磊)

編集:董丽娜

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