「良い商品があれば、売れ行きや利益の心配はない」。

　今年の全国両会（全国人民代表大会・中国人民政治協商会議全国委員会）の「部長通路」で、文化・観光部（省）の孫業礼部長は、ある冷蔵庫マグネットに特に言及した。

　国家博物館は昨年夏、明・孝端顕皇后の鳳凰の形の冠に着想を得た冷蔵庫マグネットを発売した。デザインが精巧で美しいことから、店頭に並ぶや否や飛ぶように売れる大ヒット商品となった。

　博物館の小さなクリエイティブグッズが、大きなビジネスを生み出している。

　「鳳凰の形の冠冷蔵庫マグネット」は過去20年間に国家博物館で最も売れた商品であり、同シリーズの売上高はわずか数ヶ月で1000万元（1元は約20.5円）を突破した。

　「鳳凰の形の冷蔵庫マグネット」と同様に、購入数が制限されるほどヒットしている博物館のクリエイティブグッズには、北京古代建築博物館の「天宮藻井冷蔵庫マグネット」がある。宮殿や寺院建築などに見られる彫刻などで装飾された天井「藻井」をモチーフにしたもので、このマグネットを求めて、早朝5時から博物館の外に並ぶ来館者もいるほどだ。

　現在でもなお、「天宮藻井マグネット」を購入するには、3日前にオンラインで予約する必要がある。同博物館の薛倹館長によると、最も購入希望者の多い時には、毎日午前10時のオンライン予約のスタートから2秒以内に400個分の枠が全て埋まってしまったという。

　クリエイティブグッズの爆発的な人気は、文化への自信がその根底にあるだけでなく、文化クリエイティブ産業の高度化と消費スタイルの転換・高度化によっても支えられている。

　アイスクリーム、アクセサリー・ストラップ・飾り物、水筒・タンブラー、冷蔵庫マグネット、トートバッグ、ぬいぐるみ、カレンダーなど、歴史的要素と現代的デザインを融合させたクリエイティブグッズは、ますます多くの日常生活シーンに広がっている。博物館の文化財は持ち出せないが、美しく精巧に作られたクリエイティブグッズは、手のひらサイズの「小さいけれど確かな幸せ」となる。

　様々なクリエイティブグッズの登場は、来館者の消費意欲を刺激している。昨年夏に上海博物館で開催された「ピラミッドの頂点：古代エジプト文明展」では、1日あたりの来場者数が1万人を超え、クリエイティブグッズの総売上高は8000万元を突破し、関連グッズ消費の波及効果も10億元以上に達した。

　人気のクリエイティブグッズは消費者を惹きつけるだけでなく、現地の雇用と所得の増加にも貢献している。国家博物館の「鳳凰の形の冠冷蔵庫マグネット」の売れ行きが好調なため、製造を委託先工場は1社から3社に増え、すでに生産量は1日5000個に達している。

　人的資源・社会保障部（省）が昨年発表した19の新職業の中には「クリエイティブグッズプランナー・オペレーター」が含まれていた。清華大学文化創意発展研究院の胡鈺院長は「現代中国の文化クリエイティブ産業が急速に発展している現状から見て、クリエイティブグッズプランナー・オペレーターに対する盛んな需要は、この職業の成熟を大きく加速させることになるだろう」との見方を示した。