あなたの知らない万里の長城 最新の研究成果や芸術価値を紹介

ソース:新華社作者: 2023-12-18 16:26

北京市延慶区にある八達嶺長城西区間の建造物基礎。(資料写真、北京=新華社配信)

 中国の万里の長城は、線状の文化遺産として世界最大の規模を持つ。長城は人々が知る軍事的防御機能だけでなく、国境貿易や民俗融合、芸術的審美の役割と価値も担ってきた。

 今回は長城沿線の重要な遺跡や遺物を通じて、長城に関する最新の研究成果や芸術的価値を紹介していきたい。

 北京市延慶区の八達嶺長城では今年、西区間の建造物基礎から石に火薬を詰めた手投げ爆弾「石雷」59個が整然に並べられた状態で出土した。同市考古研究院の尚珩(しょう・こう)副研究員は「どうってことのない石に見えるが、穴が開いており、火薬を詰めることができる。敵に投げつけるほか、爆発させれば不意打ちの効果もあった」と説明。明代の長城防衛では一般的な兵器だったという。

 石雷が見つかった建造物基礎は、調査研究により武器の保管庫跡だと判断された。尚氏によると、北京の長城の考古学調査で同様の性質を持つ建造物が見つかるのは初めてという。

 万里の長城の文化的・芸術的価値は、各種の形状や内部構造だけではなく、壁面のレリーフや装飾文様などにも反映されている。

 河北省秦皇島市にある董家口長城の券門(けんもん、アーチ門)には多くのレリーフが施されており、内容は豊かで縁起も良く、人々の平和で幸せな生活への思いを今に伝える。うち、花瓶に飾られた花を描いた「宝瓶插花」文様は平和を守ることを意味し、国境守備兵たちの平和な生活を願う気持ちを表現している。また、花が絡み合う「纏枝花(てんしか)」文様は辺境の兵士たちの美しい永遠の愛への期待の表れだという。

 甘粛省敦煌市の馬圏湾漢代烽燧(ほうすい)遺跡からは、多くの漢代の簡牘(かんどく)が出土している。簡牘は紙が発明される以前の中国で文字を記した竹札や木札を指し、うち1枚には、兵士として国境を守る夫へ暖かい服を送ったという心温まる話が記されていた。

 考古学の理念と手段が向上したことで長城ではより多くの発見があり、国境を守る兵士たちの日常生活も徐々に復元されるようになった。

 北京の箭扣(せんこう)長城では昨年、敵台(防御施設)の屋上部で明代のオンドルやかまど跡などの生活関連の遺物が初めて見つかり、鍋や皿、碗、はさみ、シャベルなどが出土した。敵台の一つでは将棋盤のような生活の息づかいを感じる遺物も見つかっている。

 河北省張家口市の西境門遺跡は明代に築かれた長城の関門跡で、門洞は馬車1台が通れる幅しかないことから地元で「小境門」と呼ばれる。門洞が小さいのは遊牧民族の襲撃に備えるという防御上の観点からだが、長城には威風堂々とした関門もある。

 西境門遺跡から遠くない地点にある大境門遺跡は清代の造営で、北京市の居庸関、甘粛省の嘉峪関(かよくかん)、河北省の山海関とともに「長城四大雄関」と呼ばれる。大境門の名称が「関」ではなく「門」なのは、清代以降に長城の防御施設としての役割が後退したことに関係する。大境門は多民族国家の強化と発展、中原地域(黄河中・下流域)と北方草原地域の交易に重要な役割を果たした。西境門から大境門に至る長城の関門の機能の変遷は、長城が中華民族の多元一体構造の発展において重要な役割を果たしたことを示している。

編集:董丽娜

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