新たな生命の息吹が吹き込まれた古代の城壁

ソース:人民網日本語版作者: 2023-02-14 13:54

 「2022年中国文化・観光デジタルイノベーション実践事例トップ10」がこのほど発表され、西安城壁管理委員会による「デジタル化による西安城壁文化財保護と文化遺産伝承のサポート」事例がトップ10入りを果たした。各種デジタル技術によって、西安城壁は、よりバラエティに富んだ形で、その素晴らしい姿を人々に見せている。

西安城壁のパノラマビュー(写真提供・西安城壁管理委員会)。

 昔ながらの姿を残す西安城壁は、すでに1400年以上の歴史がある。都市の発展や地下鉄の開通、沿線商業エリアの発展に伴い、保護の対象範囲は、城壁本体のみならず、木造建築や堀も含まれるようになり、その修理やメンテナンスの難易度はますます高くなっている。しかし、一連のデジタル技術の応用化を実現させることで、休憩を必要としない「見張り番」が城壁に登場した。

 永寧門の壁面には、数十メートルおきに、3つの目立たない円柱が並んでいる。西安城壁管理委員会文保観光部の職員である解志遠さんは、「これは、バーチカル固定式傾斜計で、南門瓮城内壁の水平変位を高精度でモニタリングできる。傾斜計を始めとするモニタリング装置およびモニタリングチェックポイントが、全長13.74メートルに及ぶ城壁をカバーしており、城壁の壁体と付属する建築物の安全状況を監視している」と説明した。

 西安城壁管理委員会文保観光部の責任者である高衡さんは、「堀沿いには、31ヶ所の地下水位モニタリングチェックポイントが設けられており、地下鉄が城門の下を通過するときの振動モニタリングチェックポイントも設けられている。これらのデジタル検査装置から提供される膨大な量のデータのおかげで、高精細化された城壁保護のためのしっかりとした基盤が確立されている。これらのデータをもとに、我々は、城壁文化財保護のための『4カラー』の等級別警報システムを構築した。城壁の沈下やひび割れに関する警報の閾値を設け、緑・黄・橙・赤の4色による等級別警報システムを導入し、各警告レベル別の対応措置を講じることにした」と紹介している。

 「『頭が痛めば頭を治療し、足が痛めば足を治療する(根本的治療を施さず、その場しのぎの応急的な治療をする)』という方法から、『病気に至らない不調や症状が見られる未病の状態を把握して本格的な病になる前に対策をとる』予防措置へのシフトを実現したデジタル情報技術は、西安城壁の保護事業に根本的な変化をもたらした。今後は、さらに、3Dスキャンや自動モニタリングなどの技術や手段を駆使して、城壁の延命化に取り組んでいく」と高衡さん。

西安城壁管理委員会情報センターで、大型モニターにリアルタイムで映し出された観光客の流れや気温などの各種データ(写真提供・西安市城壁管理委員会情報センター)。

 「まあ!なんて高いの!」VRゴーグルを装着した観光客の趙妍さんは、思わず同行者の手を握りしめていた。頭上にあるガラス屋根の彼方では、ドローンが趙さんを「乗せて」、遥か遠くまで「運び」、彼女はVRゴーグルを通じて高い空から城壁の美しい眺めを堪能していた。

 自転車や電気自動車、遊覧ボート、そして今では「ドローン+VR」も加わり、城壁の観光スタイルはますますバラエティに富んでいる。西安城壁景勝地の職員によると、クラウドプラットフォームによる遠隔操作可能なドローンの自動飛行を実現させたことで、「上空からの古城遊覧」が観光客の間で人気を集めているという。

 西安城壁管理委員会情報センターでは、観光客の流れや気温など各種データが大型モニターにリアルタイムで表示され、1千台以上のセキュリティ機器が同センターのビッグデータ管理プラットフォームに繋がり、文化財保護のモニタリング・客の流れの把握統計、赤外線カメラによる周辺監視・警戒線内への侵入検知など、さまざまな機能を実現している。

 西安城壁旅行会社の蘇寧総経理は、「文化観光資源に対するデジタル化モデルチェンジとアップグレードは、今後必ず進まなければならない道。スマート景勝地の建設によって、より斬新な観光体験やより高い管理効率がもたらされる」と指摘している。

西安城壁景勝地が開発した各種デジタルコレクション(写真提供・西安城壁管理委員会)。

 現在、博物館のクラウドツアーは、現地を訪れて見学することができない観光客に、その機会を提供している。西安城壁唐皇城含光門遺跡博物館は、3次元データ取得技術にもとづくデジタル博物館を開設し、ミニアプリによるパノラマ鑑賞を実現した。また、同博物館が開発したHTML5ゲーム「小武士極速夜砲」は、多くの子供たちが西安城壁に関心を寄せるきっかけとなっている。

 西安城壁管理委員会文保観光部の高衡さんは、「斬新なデジタル文化製品は、伝統文化に対する人々の一体感や誇りをさらに刺激することができる。データ情報にもとづき、我々は今後も、観光客の興味をいっそう堀り下げ、技術革新を推し進めていく。それによって、デジタル技術が、文化遺産の紹介・普及に向けた翼をより大きく羽ばたかせることになるだろう」と期待を抱いていた。

編集:董丽娜

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